【レポート】SLOW ACADEMY 障害者のアート・スポーツ活動 指導者育成講座 フィードバック・報告会

障害の有無を超えて誰でも参加できる場づくりを行ってきたスローレーベルのノウハウを基に、障害のある方とのアート・スポーツ活動の楽しみ方や場づくりを学ぶ研修プログラムのフィードバック・報告会を実施しました。

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今回で本講座はラスト。
まとめとして、ターゲット1〜3のモニター受講生の方ぞれぞれが、本講座を受講して各自実践した障害のある方と共に行うプログラムについて報告し、学びを共有しました。

報告会はターゲット1、2、3それぞれに分かれて行いましたが、
各回のアイスブレイクは共通で、「ジップザップ」というゲームを行いました。
「ジップザップ」はサーカスワークショップに取り入れられているゲームで、
複雑なルールはありませんが、とっさの判断力が試されます。
緊張感はありますが、ミスしたときにも笑いが生まれ、雰囲気が和むのが良いところ。

緊張もほぐれたところで、受講生もスタッフも円になって座り、報告会スタートです。

ターゲット1

ターゲット1は、職場等にて障害のある方と関わりのある方(福祉施設職員、特別支援学校教員、作業療法士の方など)のグループで、実習では施設や学校でのレクやプログラムとして活用できる「サーカスワークショップ」を体験。

【ターゲット1実習の様子はこちら】

それぞれの方が所属している施設で、サーカスワークショップで体験したワークを取り入れ、実践してくださいました。
各施設の利用者の方に合ったワークを選んだり、道具を使いやすい形に自作したりして、「想像力と創造力」を駆使して実践してくださっており、その工夫に我々も大いに学ばせていただきました。

課題として、「自分だけサーカスワークショップを受けて、施設に戻って実践しようとしても、ほかの職員を巻き込んでいくのが難しい」といった声も。
まずは私たちが現場に出向き、職員の方々を対象にしたサーカスワークショップを行うと、もっとスムーズにぞれぞれの現場で広げていくことができそう、という可能性が見えました。

 

ターゲット2

ターゲット2は、芸術や⾝体に関するスキルはあるが、障害者との活動経験がない方
(ダンサー、ヨガ・バレエ教室等の身体系インストラクターの方など)のグループ。

実習として、障害のある方を交え「最後に作品発表を控えた90分の創作現場」と想定したワークショップを行って、スローレーベルがワークショップや公演に向けて創作を行う際のチーム体制やスタッフワークを体験しました。

【ターゲット2実習の様子はこちら】

ダンスやボディワークのワークショップなど、それぞれの得意分野を活かし、障害の有無関係なく楽しめる講座を実践してくださいました。
「これまでは、『準備してきたものを全部やらなきゃ』という思い込みがあったが、体をうまく動かせない人がいたら、『こう変えればできそう』と着眼点を変え、その場でできそうなことを探すことができた」
と、こちらのグループでも「想像力と創造力」を発揮された受講生の方のコメントがありました。

共同研究者のおどるなつこさんにも参加していただき、意見をいただきました。

また、「道具(リングや棒など)を使いたかったが、今回はできなかった」という声に対して、サーカスアーティストの金井ケイスケさんは、
「表現のなかに、自分の身体だけではなく、道具があることでサーカスになる。
『自分』だけではなく、道具にも注目が集まることで、表現が柔らかくなったり、観客を楽しませる効果も生まれる」
と、サーカスの観点からの道具の有効性を話してくださり、学びが深まりました。

 

ターゲット3

ターゲット3は、障害者の創作活動やアクセシビリティ課題に取り組もうとする芸術⽂化関連催事主催者や制作者(⽂化施設職員、イベント運営・制作の方など) のグループ。

実習では、「インクルーシブな企画を作ろう」と題し、
ご自身の活動領域にて実施予定もしくは計画中の事業を想定した企画立案について、
架空の「申込者リスト」(視覚障害、身体障害、精神障害などさまざまな障害を持つ方もいれば、健常者の方もいるという設定)に基づいて、誰もが安心して参加できる場作りについて考えるワークショップを行いました。

【ターゲット3実習の様子はこちら】

将来的に一つの舞台作品を作ることを目指したダンスのワークショップや、
大きな公園のなかに点在するアート作品を巡回する企画など、実践の形もさまざま。

初めて障害のある方を受け入れるワークショップに挑戦した方は、「最初はどうなるか心配もあったが、講師とコミュニケーションを取りながら楽しく参加してくださっていて、『大丈夫なんだな』という印象があった」
と、実践前後で印象が変わったと話してくださいました。

障害のある方も含めいろいろな人に参加していただける企画にしたいと考えていたものの、アクセシビリティに取り組むのが遅くなってしまった、という方もいらっしゃいましたが、そういった反省点も今後に活かせそうです。

劇場のスタッフの方など、いわゆる「ハコ」に所属する方も多数おり、
特にアクセシビリティが問題になることが多いこのグループ。

完全にバリアフリーな環境を作ることはなかなか難しいため、
どのようにすればバリアのある環境を楽しめるかという発想の転換が必要、という声が聞かれました。
また、障害のある方にとってのバリアは、障害のない人にとってもバリアになり得るので、障害の有無にかかわらず、誰にとっても参加しやすい環境を作るという視点も重要。

安全面などにしっかりと配慮することは必要ですが、「障害者」という存在を特別視しすぎず、構えすぎないほうが、かえってさまざまな人に参加してもらえることに繋がることも多いのではないでしょうか。

 

以上でこの講座は終了となりますが、
スローレーベルでは、今回の研究事業でモニター受講生の皆様からいただいた意見を活かし、今後展開していく研修プログラムを組み立ててまいります。

ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました!

(SLOW LABEL 西川)

 


beyond2020プログラム認証事業
平成30年度内閣官房 「オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査」に係る試行プロジェクト
SLOW ACADEMY 障害者のアート・スポーツ活動 指導者育成研修プログラム

主催:スロームーブメント実行委員会
協力:公益財団法人神奈川芸術文化財団、神奈川県立青少年センター
企画・制作:特定非営利活動法人スローレーベル