【レポート】ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017「sense of oneness とけあうところ」上映会&トーク,

2018年10月8日、横浜ラポールにてヨコハマ・パラトリエンナーレ2017の記録映画
「sense of oneness とけあうところ」の上映会&トークを開催しました。

障害の有無を超えて、国内外1万人以上の人々がパフォーマーやアートの作り手として参加し、
多様な人たちの協働による様々な作品が繰り広げられたヨコハマ・パラトリエンナーレ2017。

本上映会では、映像作家・池田美都さんが本番の様子やパフォーマーたちが稽古を経て成長する過程などを丁寧に捉えたアートドキュメンタリー映画「sense of oneness とけあうところ」を初公開。
そして、上映後のトークでは2020年の第3回開催に向けてビジョンを共有し、
ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020の概要を発表しました。

準備と当日の様子をお届けいたします。

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今回の上映会では、聴覚に障害のある方にも楽しんでいただけるよう、映画には字幕がつき、
トークでは手話通訳と要約筆記を行いました。

客席から通訳さんの姿や、要約筆記のモニターが見やすいように、
事前に入念なチェックや打ち合わせをしていきます。

本番ではこのようになりました。

手前の机に座っている4名の要約筆記者の方々がトークを聞き取って入力した文字が、
壇上のモニターに映し出されています。
モニター横に立っているのが、手話通訳さんです。

また、上映会当日、準備のために集まったスタッフの中には、
スローレーベルスタッフだけではなく、
パラトリエンナーレ2017でインターンとして活躍してくださった方、
そして、スローレーベルが開催しているアクセシビリティ講座の受講生の皆さんがいらっしゃいました。

アクセシビリティ講座は障害の有無を問わず、誰でも楽しめる文化・アート活動の場のアクセシビリティや、
障害のある方と活動する際のサポート方法などを実践を通して学ぶ講座です。
受講生の皆さんには、実習として、受付、客席案内、スペシャルニーズ対応を担当していただきました。

アクセシビリティ講座のレポートはこちら

アクセシビリティ講座の受講生もみんなで会場の下見を行いました。

車椅子の方も安全に入場していただけるかなどをチェック。
よりバリアフリーな環境を作るために、意見が飛び交います。

会場の準備も無事終わり、いよいよ開場。

スタッフは、パラトリ2017でパフォーマンスに使われていた「ウサギ」の衣装を着て雰囲気を盛り上げます。

また、今回の会場には、アートステージで展開された実験的作品《「ない」から始めるプロジェクト》の特別展示も行いました。

《「ない」から始めるプロジェクト》

寺垣 螢(訪問の家 朋) ×新川 修平(片山工房) × 藤原 ちから/ 2017年

「人」と「表現」を考える場をコンセプトに活動する神戸市・長田区の福祉施設「片山工房」の新川修平が右足でペンキの入った容器を蹴るというパフォーマティブな技法(澤田技法)で絵画の制作を行ったメンバー澤田隆司氏との創造体験を入り口とし、「訪問の家 朋」の寺垣 螢とともに新たな創作表現を探ります。「福祉」と「共創」の本質に迫る取組みであり、演劇批評家である藤原ちからによってそのパフォーマンスの背景を言葉で可視化するプロジェクトです。

さて、続々とお客様が集まってきて、いよいよ開演です。

司会の斎藤優衣さんもうさぎの衣装を身に着け、雰囲気満点。

ヨコハマ・パラトリエンナーレ主催の横浜ランデブープロジェクト実行委員長・恵良隆二さんのご挨拶の後、
今回の記録映画の監督を務めた映像作家の池田美都さんからのコメントが紹介されました。

「この映像はドキュメントと物語が曖昧で、それは私が普段から作品を作る上で大切にしていることで、一番楽しんでもらいたい部分です」

一体どんな作品なのでしょうか?
期待感も高まったところで、いよいよ上映開始です。

画像:池田美都「sense of oneness とけあうところ」より

画像:池田美都「sense of oneness とけあうところ」より

画像:池田美都「sense of oneness とけあうところ」より

約70分の映画の中では、まるで「不思議の国」に迷い込んだアリスのような少女が出てくるシーンがあったり、
公募で集まった多様なパフォーマーたちが、オーディションや稽古を経て、
本番でお客さんを迎える「ウサギ」として成長するドキュメンタリーシーンがあったり、
まさに記録と物語が「とけあう」瞬間が展開され、
常識やこれまで「当たり前」と思っていたことを揺さぶられるような不思議な世界が繰り広げられました。

会場で展開された障害のある方とアーティストのコラボレーションによるアート作品や、
パフォーマンスステージでのショーの様子など、
「不思議の夜の大夜会」を追体験することができる作品でした。

休憩を挟み、次はスローレーベルディレクターの栗栖良依のトーク。

トークでは、2009年からはじまった横浜ランデヴープロジェクト、
2014年の「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」誕生、
2017年の第2回、そして2020年に向けた歩みと、
これからのビジョンについてお話しました。

2020年のパラトリの目標は「フィクションをリアルにする」。

2020を最後に、パラトリエンナーレはトリエンナーレと統合される計画です。
なぜならそれは、障害の有無関係なく、
トリエンナーレのなかに「とけあう」ことを目指しているから。

パラトリという非日常の世界で成立しはじめている「誰もが居場所と役割を感じられる社会」が、
日常の生活のなかでも実現されるためにはどうしたらいいのか。

「パラ」がとれる未来へ向けて、現在進行形でさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。
例えば、ソーシャルサーカスプロジェクト。
海外では、芸術性より教育効果を重視した「ソーシャルサーカス」という分野があり、
道具と身体を用いてバランス感覚・操作感覚・創造性・協調性・社会性などを
総合的に育めることから注目を浴びています。
スローレーベルでも、「サーカス・アート」  と 「リハビリテーション」 の親和性に着目し、
「障害者の心身の機能向上」を新たな視点で研究した「トレーニングプログラム(メソッド)」を開発しています。
そのほかに、上映会でも受講生が活躍してくれたアクセシビリティ講座や
障害の有無を問わず参加できるプログラムを実践できる指導者の育成講座など、
主に障害のない方に向けた取り組みも進行中です。

そして、2020年のパラトリエンナーレ新情報も公開。
なんと発表の舞台が横浜新市庁舎に決定!
果たしてどんなふうになるのか、乞うご期待です。

11月23日(金・祝)には、栗栖良依がスローレーベルの取り組みをご紹介する特別トークイベントを開催しますので、ご興味のある方はぜひお越しください。

【11月23日「SLOW LABELがいま取り組んでいること〜障害者が地域で活動するために」の詳細はこちら】

今回来てくださったお客様には、パラトリに出演してくださった方や
ワークショップに参加してくださった方も多く、
会場はなんだか同窓会のような温かい雰囲気に包まれていました。

惜しくもパラトリには参加できなかったという方からは、
「映画を観て、参加できなかったかったことがあらためて残念、2020こそは!」
といった声も。
ぜひぜひ、お待ちしております!

また、多くの方から、この映像をもっといろいろな人に広めてほしい、
というご意見をいただきました。
今後上映する機会がありましたら、このウェブサイトでお知らせいたします。
(SLOW LABEL  西川萌子)