はじめに
障害のある人がアート活動に参加するとき、その場に行くまでのアクセス、たどり着いてからのコミュニケーションなど、様々なハードルがあります。
それらのハードルを取り除くことによって、一人でも多くの人が安心してのびのびとアートに取り組めるよう環境を整えたい。環境を整え、表現者の裾野を広げることで、質の高い、新たなアートを生み出す原動力にしたい。
そんな想いを胸に、スローレーベルは、「アクセスコーディネーター(障害のある人が参加するための環境を整える人)」と「アカンパニスト(一緒に創作活動をする人)」といった、サポートするための「人」の発掘と「方法(ノウハウ)」の研究に取り組んでいます。
アクセスコーディネーターとアカンパニストのしごと
環境面、創作面、物理面、心理面…… 様々な側面から、アート活動をサポートする役割を果たす存在が、アクセスコーディネーターと、アカンパニスト(伴奏者)です。
アクセスコーディネーターもアカンパニスト(伴奏者)も、主体的に創作の場づくりを担う存在。こうした人材が増えていくことで、障害のある人のアート活動の場は社会の中に広がっていくと考えています。
情報をわかりやすく伝える
その人の状況をよく聞き、必要な情報を最適な手段で伝えます。チラシなどでは伝えきれない、きめこまかな情報を届けます。
創作の場までの不安を取り除く
バリアフリー情報を個別に提供したり、事前にその人の状況をヒアリングすることで、参加までの不安やストレスを最小限にします。
現場での体調や精神状態をチェックする
現場では様子をよく観察し、必要に応じてケアを行います。
困っていることを一緒に乗り越える
創作する中で起こる物理的・心理的な困難も、創作者という同じ立場で寄り添いながら乗り越える方法を一緒に探リます。
創造性を引き出し合う
本人が気づかない隠れた創造性を見つけ、引き出し合います。
アカンパニスト
保住綺草デザイナー
アクセスコーディネーター
廣岡香織ひろおか・かおり
1996年に看護師免許取得後、早稲田大学演劇研究会にて舞台制作全般を学ぶ。その後、アフリカに移り住み結婚。帰国後、出産・子育ての経験を経て、2015年より特定非営利活動法人スローレーベルのアクセスコーディネーターとして「障害のある人が舞台に立つための環境整備」に取り組む。一人ひとりの特性に合わせた合理的配慮のコーディネート、創作現場における身体的・精神的ケアを行う他、活動の普及を目指し新たな人材の育成に取り組む。
アカンパニスト
金井ケイスケかない・けいすけ (サーカスアーティスト)
中学在学中に新宿で大道芸を始める。97年文化庁国内研修員として能を学んだ後、99年文化庁海外派遣研修員として、日本人で初めてフランス国立サーカス大(CNAC)へ留学。卒業後フィリップ・ドゥクフレ演出のサーカス『CYRK13』で2年間のヨーロッパツアー。その後、フランス現代サーカスカンパニー「OKIHAIKUDAN」をセバスチャン・ドルトと立ち上げ、5年間ヨーロッパ、中東、アフリカなど36カ国で公演。2009年帰国。パフォーマンスグループ「くるくるシルクDX」参加。東京都公認ヘブンアーティスト。
アカンパニスト
大歳芽里おおとし・めり (ボディアーティスト)
有馬バレエ教室にてクラシックバレエをはじめ、昭和音楽芸術学院バレエ科を卒業。ストリート・ジャズを都内クラブ、イベントなどで踊る。南アフリカの振付家ヴィンセント・マンソーの海外ツアーに参加。フランスのアンジェ国立現代舞踊センター、振付コースを卒業。自身の映像作品が8カ国で上映される。瀬戸内サーカスファクトリー、ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014、国際児童・青少年演劇フェスティバルの国際共同制作に参加。知的障がい者通所施設でレギュラー講師を務める他、看護学校やデイケア、視覚など様々な障がいを持つ人とのWS講師やアシスタントを務める。
アカンパニスト
本田綾乃ほんだ・あやの (ダンサー)
英国ランバード・スクール・オブ・バレエ・アンド・コンテンポラリーダンスへ留学。卒業後、English National Opera、IJAD Dance Company、Ascendance REP、C-12 Dance Theatreなどのイギリス内のカンパニーで踊り、振付家のキム・ブランストラップ、ペドロ・マシャド、ジャッキー・ランズリー、キャロリン・チョアらと仕事をする。コミュニティーダンス・ファシリテーター養成スクールの通訳、『スロームーブメント』アカンパニスト、京都府京丹後市を拠点とする丹後七姫劇団の一員として活動している。
アカンパニスト
高津会たかつ・かい (ダンサー)
お寺の住職をしている日本人の父とドイツ人の母のもと、家業を手伝いながら高校生でダンスを始め、卒業後の2010年に渡英。障害者の自立支援センターOrpheus Centreで1年間スタッフとして活動をしながら障害のある生徒達にダンスを指導。ロンドンパラリンピック開会式の芸術監督ジェニー・シーレイ(Graeae Theatre Company)と共にThe Royal Opera Houseにて演劇作品を発表。帰国後、長野県須坂市を拠点に、各地でパフォーマンス活動を行いながら、中野西高校ダンス部の外部講師として全国大会に導く。スタジオLUX INSPIRE代表。ペドロ・マシャド(Candoco Dance Company芸術監督)や、ジェニー・シーレイ来日時のワークショップアシスタントを務める。
アクセスコーディネーター 廣岡香織 インタビュー
アカンパニスト 本田綾乃 インタビュー
アカンパニスト 保住綺草 インタビュー
事業実績
平成28年度『「オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査」に係る試行プロジェクト』
内閣官房が推進する上記事業において、スローレーベルが提案する「共創社会実現のための舞台芸術プロジェクト」が採択されました。このプロジェクトでは、障害のあるパフォーマーの育成や、かれらの表現活動を支えるアクセスコーディネーターやアカンパニストといった専門的人材の養成を行います。
平成27年度『障害者の芸術活動支援モデル事業』
厚生労働省が実施する、芸術活動を行う障害者及びその家族並びに福祉事業所等で障害者の芸術活動の支援を行う者を支援するモデル事業として「アクセシビリティ&アカンパニスト研究プログラム」を実施しました。このプログラムでは、障害のある人が地域でアート活動を行うとき、直面する様々なハードルをひとつひとつ取り除き、環境を整えるため、サポートする「人材」の発掘と「方法(ノウハウ)」について研究しました。
本プログラムの成果報告書は下記よりご覧いただけます。
『SLOW LABEL アクセシビリティ&アカンパニスト研究プログラム2015』